人生を劇場にしない

ヴァイオリン経験皆無の親が、迷走しながら長女を導く軌跡

音量にまつわるエトセトラ

カニ~食~べ行こう~♪

 

ヴァイオリンの音量の話です。

 

いい楽器、と聴くと、まるで常人には耳にも入らないような周波数の、微細な音の違いがあるとお思いでしょう。もちろん、そういう面もあります。いい楽器はとにかく構造上のバランスに優れているため、音に濁りが少なく、幅の広い演奏に耐えうるのです。

 

が、最も重視されているのは、実は音量。同じ形の同じ構造の楽器なのに、なぜかホールの隅々にまで音が届く。それが本当によい楽器とされているのです。

 

当然ですよね、18世紀のヨーロッパに拡声器はありません。ですから曲の細部が最後尾の客にも届くように、ホールはへたな雑反響をしないように工夫され、オーケストラは満遍なく音が響き渡るように隊列を組み、そしてソリストは音量の出る楽器を求めたのです。

 

ですから、娘たちがレッスンをしていると、よく「音量が出てきた」とほめられます。まだ初心者だから、というのもありますが、「音量」と「テンポ」は特に注意もされ、褒められもします。音量というのはとにかく重視されるのです。

 

なぜか。

 

ひとつ目は、ヴァイオリンは歌う楽器だからです。ソプラノ歌手の代替だった楽器ですから、とにかく高音の伸びと声量は大事。ロックのヴォーカリストだって声量と肺活量は重視されます。

 

次に、大きな音&澄んだ綺麗な音を両立させるには、かなりのテクニックが必要だからです。ヴァイオリンを実際に構えて弓を引いてみればすぐにわかります。綺麗な音を出すことがいかに難しいか。弓と弦の擦れあう比率や速さによって、音は虹色に変化します。その虹色の中には、不要な雑な色も混じっていますので、一番美しいと思う音を自分で拾い出さなければなりません。その拾い出した音の美しさが、ヴォーカリストにおける声質にあたります。声質を保ったまま声量を上げるという高度なことを実現できるかどうかは、楽器自体のポテンシャルに左右されるのです。あまりバランスのよくない楽器だと、美しい音を目指せば目指すほど音量が落ちます。

 

楽器としてのポテンシャルの上に、さらに美術的な観賞価値まで加わったのが、ストラディヴァリウスやガルネリ・デル・ジェスなどの名器と呼ばれるものなのですね。

 

家が買えるくらい高いのにもうなづけます。買えませんけど……。




ブログランキング・にほんブログ村へ 

↑クリックくださると励みになります。