映画『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』
近所の映画館で最後の上映ということだったので、時間をやりくりして行ってまいりました。ちょっと偏った感想など書きたいと思います。
悪魔の申し子といわれた曲芸的ヴァイオリンの名手であり稀代の作曲家、ニコロ・パガニーニその人を主人公とした半伝記的映画です。wikiに載っているような逸話はすべて映像化されていました。
主役は、13歳でストラディヴァリを貸与されたという、これまた天才肌ヴァイオリニストであるデイヴィッド・ギャレット。音楽を学ぶためにモデル業で学費を稼いでいたという、天から二物も三物も受けているような人。モテてモテて仕方なかったというパガニーニを演じるのに、これほど適した人はほかにいないでしょう。実際、映画の中の演奏はすべてギャレット本人が弾いています。
演奏シーンはとにかくすばらしく、これは映画館で聴くに値するなと思いました。特に圧巻だったのはヴァイオリン協奏曲第4番 ニ短調を原曲としたアリア。
パガニーニ: ヴァイオリン協奏曲第4番 ニ短調 - 第2楽章(Paganini: Violin Concerto No. 4 in D Minor, MS 60) - YouTube
歌手シャーロット役を演じたアンドレア・デックがかわいくてイイ! 正直オペラ歌手の出来不出来はわかりませんが*1知らない人間にとってはヴァイオリンとのデュエットに身が震える思いでした。
一番面白いと思ったのは、テーマ曲の中にシューベルトの『魔王*2』のアレンジが流れていたこと。原題『THE DEVIL'S VIOLINIST』をモチーフにしているからなのか、それとも哲学的な意図があるのかは、英語にとんと疎い私にはまったくわかりませんでした。
『魔王』はパガニーニが三十代半ばのころにシューベルトの手で作られた曲で、ふたりの活躍した時代もモロにかぶっています。パガニーニの演奏はリスト、シューマン、シューベルトが生で聴いており、それぞれ多大な影響を受けています。ビートルズにぶちのめされたグリーンデイや、ラモーンズに励まされたピストルズみたいな関係でしょうか。速弾きの神イングヴェイ・マルムスティンのように後のプレイヤーに影響を与えるとにかくすごいプレイヤーだったのですね。
ただ……。
映画としては……うーん、でした。ギャレットは名ヴァイオリニストでモデルでもありましたが、役者ではなかった。演技も評価できないのですが、もっとも文句を言いたいのは外見。パガニーニは浅黒くやせていて、その姿から悪魔を連想させたという逸話があるくらいですから、やはり体重はしぼって欲しかった。少しふっくら気味の彼のアップになると、どうしても目をそらしたくなってしまうんですよね。脇を名優で固めたぶん、彼の演技は浮いてしまっていたと思います。
芝居が悪く見えたのは脚本のせいかもしれません。物語の構成法を学んだ身としては、途中で退席したくなるくらい稚拙な脚本と台詞群に、ずっと暗い座席でモジモジしていました。
まだ観ていない方はサントラで十分な気がします。音楽はすばらしかったです。
ではまた。