人生を劇場にしない

ヴァイオリン経験皆無の親が、迷走しながら長女を導く軌跡

TLP第一弾

飛び込みレッスンプロジェクト、略してTLP第一弾として、コンクール上位入賞者を何人も輩出している○大出身の男の先生に見ていただいてきました。一年生でも日本クラコンなどに入賞者を出しているので、低学年には教えられないということもなさそう。この先生に聴いていただこうと思った理由は、コンクールの戦い方を知っていらっしゃるだろうことと、ご自身の演奏力がとてつもなく高いこと*1。そのぶん個性的な方かもしれないと、少し身構えてもいたのです。

 

親子ともどもめちゃくちゃ緊張しながら伺うと、迎えてくださったのは想像していたよりずっと優しそうな方でした。

 

「何弾いてくれるの。好きなの弾いてごらん」

 

と先生。長女は恥ずかしがりやのため、「モーツァルトメヌエットを……」と少し自信のある曲を言い出します。おい、話が違うぞ長女。お前、クライスラーのプレリュードとアレグロを見てもらいたくて昨日まで練習していたんだろうに! と小声でつっつくと、「え、あ、うん……」と恥ずかしそうにモジモジ。

 

とはいえヴァイオリンを構えると別人になる長女。まだ譜面をさらっただけというレベルにせよ、なんとか最後まで弾きとおしました。親は心臓バクバクです。先生はにこやかな笑顔を崩さずに、サラッと

 

「うん、よく練習しているね。ただ、ここはこう弾いてごらん?」

 

というやいなや、頭の中が真っ白になるくらいのハイクオリティな音で惜しみなく弾いてくださいました。長女が驚き顔で私を振り返り、眼を大きく見開いて「すごいね……」と口だけでつぶやきます。先生はひととおり弾き終わると、サラッと

 

「はい、やってごらん?」

 

えっ。と親子して笑ってしまいます。気軽に言いますね、かなり難しいですよ今の演奏……。でも長女さん、果敢に立ち向かいます。

 

「もっと弓を大きく使って。ここはアップで。……そう。……もっと大きく使っていいよ弓。……そうそう。その重音はビブラートかけて。そうそう」

 

サラッと何度も何度も弾いてくださり、長女はそれを写し取ろうと必死で弓を動かします。ポジションや指使いなどもご指摘くださいましたが、主に表現力を求めた指導をしてくださるため、曲がどんどんダイナミックになっていくのがわかります。

 

30分近くクライスラーを見ていただいたあとに、またサラッと

 

「もう一曲くらい聴かせて」

 

そこで長女はモーツァルトメヌエットをといいました。

 

「んー、簡単でしょこれ。弾かなくてもいいんじゃない? でもまあ、いいか」

 

と聴いてくださることに。結局、お手本を弾いてくださり、それにあわせて長女が弾くということを何度か繰り返しました。まあだいたいいいでしょう、とおっしゃって、最後にまたサラッと

 

「もっと難しい曲やったら?」

 

えー。こんなにお上手な先生にそんなこと言われると、再び頭が真っ白ですよ……。

 

多大な衝撃を受けて親子四人帰宅。なぜか知らないけどぐったりと疲れました。演奏技術がとにかく一流であることは本当だと確認できました。これは長女もいい影響を受けそう。最後に長女に「どうだった?」と聞いてみると、

 

「最後までクライスラーを聴いてくれて嬉しかった。それと、すごかった」

 

うん、そうね、すごかったね。そこは完全に同意するよ。ちょっとまだ余韻から抜けきれていません。もう少し頭を整理して、TLP(飛び入りレッスンプロジェクト)が終了してから総括したいと思います。

 

ではまた。




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*1:youtubeで確認済みでした。