人生を劇場にしない

ヴァイオリン経験皆無の親が、迷走しながら長女を導く軌跡

二女の「辞めたい」はちと違う

何度か触れてきましたが、年子の二女は先生ウケがよろしく、「この子はピアノに向いている」「この子はヴァイオリンに向いている」「この子の拍感覚は抜きん出ている」「音感のするどさ、丁寧さはダントツ」などと褒めちぎられてきました。子を褒められて嬉しくない親がいるでしょうか(いや、いない)。ですが、本人から熱を感じることができない以上、ごり押しするのもどうかと思ってずっと黙ってきました。

 

本人も注目を浴びたくて仕方が無いのでしょう。姉の真似をすれば親が見てくれると思うのか、どうも長女の行動をなぞるような発言が多い。かといって強い気持ちで楽器に向かっているのかというと、持ち前の天性で弾いていて、追求したいという気持ちは無さそう。親は常に心の中で「やるの? やらないの? どっちだよ!」とツッコミを入れまくっているのです。

 

それでいいんです。それが二女の個性なんだから。だからいつ本気になられてもいいようにレッスンのおさらいは長女と同じようにしっかりみよう、と夫婦で話をし、多少厳しかろうと次のレッスンまでに準備させることを怠りませんでした。

 

しかし変化がありました。

 

このブログを継続的にご覧いただけている方にはおわかりだと思いますが、最近の我が家は長女を中心に動いているところがありました。それは彼女の過渡期となる大きなイベント『TLP(飛び込みレッスンプロジェクト。詳しくはこちらをご覧ください)』があったこと、続けて夫婦やその家族が総ぐるみで大騒ぎした新しい楽器にまつわる騒動があったこと、など、親にとっても初めての経験が続いたため、とにかく話題といえば長女のことばかりだったのです。

 

とうとう、二女が行動にでます。なぜかニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながら話しかけてきました。

 

「ねえねえパパ。パパは私がピアノやヴァイオリンやバレエを辞めても、私のこと好きなんでしょ?」
「もちろんだよ。長女ちゃんにも言っているとおり、辞めたくなったら辞めてもいいんだよ」
「バレエやめたい」
「(えっ!? ピアノでもヴァイオリンでもなく、そっち!?)どうして? 理由を聞かせて?」
「なんか、えっとねー、練習の時間がー、なくなるといけない……から?」

 

いや、私に聞かないでいただきたい。

 

実は長女に同じような話をしたことがあったのです。今後ヴァイオリンの練習が大変になってくるだろうから、週に二回通っていたバレエを一回にしないか、と。長女は「うん、私はヴァイオリンだからね。ピアノとバレエが減ってもいいよ」とあっさりでした。その潔い態度に妻がほとほと感心していたのですが、きっと二女はその光景を覚えていて、「二女ちゃんもやりたいことが決まっていて偉いね!」と褒められたくて真似たのではないかと推察。

 

「どうしても辞めたいならかまわないよ。でもバレエのお友達と会うのを楽しみにしてたじゃない? あんまり会えなくなるけど、いいのかな」
「ううん」
「バレエの先生、いやなの?」
「ううん」
「レッスンがつまらないの?」
「ううん」
「じゃ、なんで辞めたいの?」

 

すると、また先ほどのニヤニヤ笑いをしながら言いました。

 

「ピアノとか、ヴァイオリンとか、きびしいのがいや」

 

??? お師匠やピアノの先生はまったく厳しくないので、きっと親の練習を見るときの態度を言っているのでしょう。なら普通、ピアノかヴァイオリンを辞めたいって言うんじゃなかろうか。

 

「じゃあ、ピアノかヴァイオリンを辞めればいいんじゃない?」
「うん、辞める」

 

あっさり!! 長女とは違う意味で潔い!!

 

「じゃあ、発表会とか出られなくてもいい?」
「ううん」
「お師匠ともお別れだけどいい?」
「ううん」
「楽器、つまらない?」
「ううん」

 

バレエの話といっしょです。もうちょっと踏み込んでみました。

 

「ピアニストになるの? ヴァイオリニストになるの? バレリーナになるの?」
「……わかんない」
「そうだよね。わかんなくていいんだよ。長女ちゃんは決めているけど、あなたは決めてなくてもおかしくないんだよ」
「うん」
「楽器はちゃんと練習してからレッスンに行くものなの。それは守ってほしいの」
「うん」
「パパとママはあなたのことが大好きだから、長女ちゃんのまねをしなくてもちゃんと二女ちゃんのことを見てるよ。本当にいやになったらまた教えて」
「うん」

 

その場はあやふやになりました。

 

あれから妻とも話し合い、いろいろとな可能性について検討したのですが、主に次の二つの理由のどちらかではないかと思うのです。

 

・どちらかに集中したい
長女はなんでもこなす(こなしたい)タイプなので、学校の勉強だろうと、習い事だろうと、はたまた友達と遊ぶのだろうと、すべて全力投球です。しかし二女はやりたいことが決まっていて、それさえやっていれば幸せになれる人。お絵かきしかり、一輪車しかり。だから、二女がとても理性的な考え方をしていると仮定すると、「ヴァイオリンもピアノも毎日長い時間詰め込まれるけど、バレエを辞めれば少しは時間ができてどっちかに集中できる。だから専科を決めて余計な時間を排除し、そこに向かって徹底的に打ち込みたい(二女・談)」という意味とも取れます。

 

・とにかく注目されたい
長女に初めてコンクールの話をしたとき、妻は「ヴァイオリンでかけっこみたいに順番をつけるの。やってみる?」という聞き方をしたそうです。二つ返事で「やる!」と応えた長女さん。彼女の性格にあっているんですよね、競いごと。で、その前後は両親はもちろんのことじじばばまで束になって長女を応援。結果についてもとにかく褒めそやかしました。長女に自信を与えた出来事だったのです。二女はこの「注目される」ことを望んでいるのではないか、というのが二つ目の仮定です。

 

真相を今日中に判明させるなんて無理な話ですので、頭の片隅に置きながら注意深く見守っていこうと思います。

 

ではまた。




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