人生を劇場にしない

ヴァイオリン経験皆無の親が、迷走しながら長女を導く軌跡

ヴェンゲーロフ氏のマスタークラス

先日もチラッと書きましたが、ロンドンで行われたヴェンゲーロフ氏のマスタークラスをダイジェストでレポートくださった方がいらっしゃいまして。遠くに住みながら勝手に仲間意識を持っているのですが、いつもとてもよくしてくださっています。この場をお借りして御礼もうしあげます。

 

そのレポートがバツグンにおもしろいんですね。

 

ヴェンゲーロフという人はとにかくユーモアに溢れています。そして言葉のセンスが良く、語彙も多い。表現がまるで絵本のようで、おとぎ話の中に生きている人みたいです。とにかくロマンチスト。

 

その教えは、常に長女の先生がおっしゃっていることとモロにかぶっています。たとえば。先生はいつもこうおっしゃいます。

 

「勢いの無い音楽はダメ。完璧な音程、完璧なリズム、完璧なテンポ。それだけでは音楽にはならないの。もっと乱暴で、汚くて、適当さがないと」

 

そしてヴェンゲーロフ氏のレポート。プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲 第1番 第1楽章を弾いた生徒さんに対して。

 

「この曲を弾くには、あなたは良い人すぎる。もっと攻撃的になってもいい。音楽は、いつも美しく、良いものである必要はない」

 

ビタかぶりじゃないですか!

 

続いてバッハの無伴奏。コンクールの講評ではときに「もっと揺らしていい」と書かれることがあるそうなのですが、先生は基本的にバッハは「インテンポで」とおっしゃる方。んじゃどっちが正しいのよ? ……まあ音楽ですから正解はないのですが。

 

以下はヴェンゲーロフ氏の解釈。

 

「バッハはin tempo。どうしてテンポを変えながら弾くのか理解できない。練習するときにメトロノームを使うこと。私も練習ではメトロノームを使います。メトロノームは友達。ハーモニーを変えるときは、色彩は変える。でもテンポは変えない。ドイツの音楽は、基本in tempo。ドイツ語と同じで強く、正確。コンピュータに近いと言ってもいいくらい」

 

おお、またビタかぶり。

 

最後に。「丁寧に弾いて」の次に先生からよく長女が言われるのが「速すぎるよ?」という言葉。音楽をちゃんと伝えようとしないといけない。テクニックだけで指先の回転だけで音楽を進めてはいけない。推進力は自らの強い意思から生まれなければならない。そういう教えです。

 

さて、ヴェンゲーロフ氏の見解を見てみましょう。生徒さんの曲はチャイコフスキー ワルツ スケルツォop.34。

 

「君がまず学ばなければならないのは、be patient。急がないように。速く弾きすぎる。でも、音楽の流れを止めないこと」

 

またもやビタかぶりじゃないですかぁぁ! 長女さん、Be Patient。流れに身を任せるだけじゃあ音楽にならないんだぜ。すべてをコントロールしていかないとね。

 

先生の音楽的指導はヴェンゲーロフ氏に近いんだなあ。先生ご本人に言ったら嫌がりそうだけど……。そんなことを思いながら読ませていただいたレポートでした。Hさん本当にありがとうございます!

 

それにしてもマスタークラス、楽しみの一環としてはいいですよね。参加してみたい!

 

ヴェンゲーロフ氏はしょっちゅう日本にも来ますから、機会があればマスタークラスを聴講してみたいものです
エンターテインメントとしても一級品のマスタークラスだと思います

 

ではまた。