人生を劇場にしない

ヴァイオリン経験皆無の親が、迷走しながら長女を導く軌跡

コンクールは相対的評価しかできない

姉妹の喧嘩がとても増えています。二女の口が達者になってきた上、言葉の使い方が乱暴なため、長女もカチンとくる様子。長女も長女で男の子っぽいところがありますから、売られた喧嘩は全力で買ってしまう。

 

するともう、阿鼻叫喚の世界。ずーっとずーーーっと喧嘩しています。

 

「もう喧嘩ばっかりしているなら2人で家出してきなさい!」

 

なんて叱責が増える昨今の我が家なのです。

 

そんな喧嘩する2人ですが、よくよく聞いているとどちらが悪いというわけでもないんですよね。長女が短気といえばそれまでだし、二女が無礼といえばそれまでだし。昔の人はうまいことを言ったもので、喧嘩両成敗とはまさにこういう状況のことをさすのだと思います。叱るにしても「どちらがより酷かったか」でしか比べることができません。そんなのは見方や心情によっていくらでも左右する。

 

つまり喧嘩とは、競争とは、どうあがいたところで相対的評価なのです。

 

コンクールというものに嫌悪感をいだく人は、きっと「音楽を喧嘩の材料にしている」部分で心にひっかかるのではないかと想像しています。そして喧嘩とは古今東西、政治力のあるほうが勝つようにできています。目に見えない力が加味されることも多々あるでしょう。それがあからさまだと批判の対象になりますが、受賞者や受賞関係者に利益が生まれるようになると、ある程度は政治力がものを言うようになります。こればかりは、どうしようもない人類の性ですね。

 

ショパンコンクールではファイナルに小林愛美さんが進出したことで、音楽関係はもとより一般紙にまで報道されるほどのお祭りとなりました。しかし結果はご存知のとおり。ご本人も相当なショックだったようで、伊熊よし子さん(音楽評論家)のブログにも彼女の本音が書かれていました。

 

でもですね。不思議なもので。

 

www.youtube.com

 

これ、ショパンコンクールYoutube公式チャンネルが提供する、ファイナリストの演奏リストなのですが、優勝したチョ・ソンジン氏に賞賛の声が集まるのは当然のこととして、彼に次いで動画にコメントが数多く寄せられたのは何を隠そう小林愛美さんなんです。しかも内容は、「結果にがっかりしなくていい。私はあなたの音楽が素晴らしかったと思っている」といったものから「これは政治の問題だ」といったものまで実にさまざま。

 

その声は、日本人からじゃないんですよ。世界中のショパンコンクールファンからのものなんです。もちろん中には心ないコメントも散見しますが、それは正等な批判というよりは殴り書きみたいなものが多い。

 

採点表を眺めてみるともっとおもしろいことがわかります。Dmitri Alexeev氏が彼女に1点をつけましたが、この人の採点を縦に眺めると、1~10ポイントをそれぞれ重なることなく割り振っています。このような採点方法をとる人はほかにもJanusz Olejniczak 氏、John Rink氏(10点はつけず9点が2名ですが)など何人かいらっしゃって、結局そういった評価基準の犠牲になっただけで、1点がついたからダメだった、というものでも無さそうです。

 

ファイナルに弟子3名を送り込んだThai Son Dang氏は小林さんに7点をつけています。それ以外には8点が最高。ということは最高の演奏に次ぐくらいの実力と認めているわけです。

 

結局は実力的(人気的)に僅差であったとしても、Dmitri Alexeev氏のような相対評価をすれば9点差がつくんです。政治力まで加味してしまったら、その人の総合的な実力がどうかなんてまったくわからなくなってしまいます。

 

コンクールの結果は、あくまでも一種類の、しかも相当偏った目線から生まれたものである。それを忘れてコンクールを利用すると、不平不満しか残らないのではないか、なんてことを考えた日でした。

 

私も小林愛美さんの演奏は美しいと思いました
「こういう評価をされるくらいなら」と参加しない欧州ピアニストが多いのも理解できますね

 

ではまた。