人生を劇場にしない

ヴァイオリン経験皆無の親が、迷走しながら長女を導く軌跡

なぜゲームミュージックなのか

題名のない音楽会では、最近ゲームミュージックを題材に扱うことが多くなってきました。これは司会の五嶋龍くんが27歳と言う若さであることも手伝っているのかなー、なんてほほえましい気持ちで見ていた私はファミコン世代。佐渡さんのときとは違う切り口が面白いです。

 

が、これは単に司会者の若さや彼の方向性のみで進められていることではない。「オーケストラの今」をポジティブに切り取った企画なのだと思うのです。

 

ファミコンとは、ファミリーコンピューターの略であることを知らない子たちがいるそうです。それもそのはず、発売は1983年ですからもう33年前のこと。生まれる前の話である若者が、街には溢れています。

 

ファイナルファンタジーやドラゴンクエストの音楽を題名のない音楽会で「好きでした」なんて顔で出演している龍くんですが、ゲームに特にハマッた時期を10歳と仮定すると、当時発売されていたファイナルファンタジーのナンバリングなんて「7」のはずなんですよ。長期ドラマをいきなり途中から見るような感覚だったでしょうね。リバイバルシリーズも発売されていましたからもしかしたらプレイしたのかもしれませんが、龍くんが「1」をプレイしたとは考えにくい。つまりゲームと五嶋龍くんの親和性(オタク度)は、実はそこまで高くないはずなのです。

 

それをもとに、逆に遡ってみると、「五嶋龍=若い」「若い=ゲーム世代」「ゲーム世代×クラシック音楽」という指向で立案された、純然たるマーケティングに則った企画だったのだ、と気づきます。

 

その企画の元になった情報は何か。以下の記事が現実を教えてくれました。

 

www.gamespark.jp

 

『ゼルダの伝説』や『ポケモン』のコンサートは多くの観客と収益をもたらしており、クラシック音楽のコンサートとは対照的に最高で6000人を集客することもあったことのこと。そのため、現代の観客が素晴らしいオーケストラで聴きたいと思うことがあれば、それはベートーベンやモーツァルトではなく、ビデオゲームの音楽なのだという考えに至ったとしています。

カーヒル氏の考えた通り、現在行われている「ゼルダの伝説シンフォニー」世界ツアーは、多くの会場でチケットが売り切れるほどの人気となっており、オーケストラの活性化に大きく貢献しています。さらに、プロデューサーのジェイソン・ポール氏によると、会場の売店では3000人にも及ぶ来場者がそれぞれ最低10ドルのグッズを購入しているというデータもあるのだそうで、大きな経済効果をもたらしています。

 

そのうえで、こちらの記事もご参照くださいませ。

 

seikeidenron.jp

 

五嶋 ハーバード大学に進学したことで、別世界の非常に刺激を受ける仲間に影響されたこともあります。通常、ヴァイオリニストはコンクールなどで優勝して世に出てくる方が多い。でも僕は7歳の時からコツコツとキャリアを積み上げてきました。そんななか、クラッシックで成功するためには自分から売り込んでいかないといけない、とその頃気づいたのです。

演奏がうまければ振り向いてもらえるという時代はもう終わっていました。当時、僕は世界では無名ですから、プロモーターのほうから寄ってきてはくれません。また、コンサートは開催の約2年前から仕込みをするのですが、そこには裏の努力が必要。ヴァイオリンの技術だけ極めれば成功するというものでもありません。

 

こんなマーケッター&プランナーの思考回路を持つ27歳が、「自分が好きだったから」だけでゲーム音楽の番組を企画するでしょうか。言い切ってもいいですが、絶対にしないでしょうね。あの企画は綿密なマーケティングに裏打ちされた結果なのでしょう。

 

ゲームで使われていようと、映画で使われていようと、ドラマだろうと、演劇だろうと、ミュージカルだろうと、音楽は音楽。この視点を持って番組作りをしたのかと思うと「でもモーツァルトが~」「いやベートーヴェンが~」とばかり言っていたら、きっと世の趨勢からは置いていかれるのではないか、と焦りを覚えます。

 

クラシックのみを生業にするのだ、それでいいのだ、でもアリでしょう。いくらでも突き詰める道はありますし、学術方面に進化することも、エンターテインメントとしてのクラシック音楽を工夫していくことも、とても立派な音楽道ですからね。

 

が、題名のない音楽会のあの企画は、少なくともオーケストラ存続にかける「今」をちゃんと切り取っているということだけは、認識していたほうがいいな、思うのでした。

 

今の40代はモロにゲーム世代ですから、ゲームミュージックに好意的な人は多いのではないでしょうか
ただ、植松氏お気に入りベスト5という企画には、私は若干「???」でしたが

 

ではまた。