人生を劇場にしない

ヴァイオリン経験皆無の親が、迷走しながら長女を導く軌跡

上り調子のピンチ

先日のこと。長女が夜に練習していました。そこそこ調子もよく、重音もノリノリでかき鳴らしていたときのこと。

 

ガタンッ!

 

手がすべって楽器を床に落としてしまいました。幸いラグマットの上だったので、ひとめで分かるような壊滅的なことにはなっていませんでしたが、あご当てと駒が両方とも横に5mmほどずれてしまっています。本人は半分泣きべそをかいていたので、一通り注意するにとどめて楽器店に連絡。

 

「調整は可能ですが、あと10分ほどで閉店です」

 

うーむ。いきつけの店は祝祭日のため休業だし、どうしよう。ひとまず弦を緩めて駒をなんとなく直し、音程をあわせて弾かせました。練習にはなりましたが、楽器は全然鳴りません。私も長女も「あきらかに鳴らないね」と言い合っていました。

 

わらにもすがる思いで先生にメールしたところ、「夜中でもいいならいらっしゃい。直しますよ」とおっしゃってくださったので、夕飯を食べ終えてから長女とタクシーでお教室へ。「こんばんは」とご挨拶すると、長女の顔を見て破顔した先生は「あれ、来たの。学校は? もう寝る時間でしょ?」となぜか嬉しそう。

 

一度先生に「ミクロン単位であわせ」ていただいた楽器だったので、長女は塩らしく謝ったのですが、「たまにあるんだよね」とニコニコしながら「30分ください。近くの喫茶店がまだやっているので、時間をつぶしてまたいらしてください」とおっしゃってくださり、我々はお礼を言いながら喫茶店へ。長女といろんな話をしたり、本屋で立ち読みしたりしていたら、あっというまに30分が経ち、再度伺うと、

 

「ヴァイオリンは表板が振動するんだけど、すべてが同じように震えるわけじゃない。震える場所と震えない場所があって、最も震える場所に魂柱を立てて裏板に音を伝えている。だから駒が1mmズレると本当に鳴らなくなっちゃう」

 

と薀蓄を語ってくださいました。そして、例のごとく

 

「駒には絶対に触らないでください」

 

と念を押され、たくさんお礼を言って帰宅しました。

 

夜中に出かけるという行為と先生にイレギュラーにお会いできた嬉しさからか、長女はなんだか誇らしげな態度で帰宅。いや、君の不注意が原因だからね? とは思ったものの、モチベーションにつながるならいいか、と思いなおしました。

 

大変な年の瀬ではありますが、おもしろい体験でした。

 

ではまた。



ブログランキング・にほんブログ村へ 

↑クリックくださると励みになります。