人生を劇場にしない

ヴァイオリン経験皆無の親が、迷走しながら長女を導く軌跡

「できない」と言える成長

就寝前、練習を終えて洗面所で歯を磨いていた長女の表情が暗くて、なんだか気になりました。どうしたのか尋ねると、

 

「うまく弾けない。本当に私、うまくなるのかな」

 

と言って暗い顔をしています。でも私はその言葉を聞いてとてもホッとしました。今までの長女は曲の形ばかりをなぞり終えると「弾けた!」と言いました。細かくツメていても、中途半端にできたところで満足していました。苦手なところは見なかったフリをするかのように無視して先に進めていました。

 

最近は、苦手な箇所を突き詰めるように何度も何度も繰り返し練習させています。少しの狂いも許さずに指摘していますし、音程はとにかく厳しく、テンポやリズムが悪いところもすべてつぶすように言い続けています。

 

自分では「できた!」と思っていることを否定されるから、最初は怒りに似た感情を抱くのでしょう。毎回毎回とても仏頂面になります。でも親も負けていられません。「この程度の演奏で満足するなんて、一生懸命教えてくれている先生にもお師匠(前の先生)にも失礼だ!」と、とにかく「悪い演奏」とは何か、「良い演奏」とは何かを教え込むのに必死だったのです。

 

「長女さん、成長したね」

 

と上記の理由も混ぜて説明し、「確実にうまくなっているよ。自分ではなかなか気づかないかもしれないけど、ほんの少しずつうまくなってる。本当に上手な人は、ほかの人にはわからないくらいの『ほんの少しの上手さ』をたくさんたくさん持っているんだよ」と伝えると、「そっか」と少しだけ表情が緩みました。

 

やっと意識が変わり始めました。

 

クリックくださると長女が仏頂面を1回我慢します
親は成長の遅さにイラつくのをこらえます

 

ではまた。