人生を劇場にしない

ヴァイオリン経験皆無の親が、迷走しながら長女を導く軌跡

感情がだだもれの演奏

楽器奏者は大変です。話したことも会ったこともないポーランド人の気持ちになって歓喜を爆発させなければならないこともあれば、見たことも聴いたこともないスロヴァキアの民謡で踊らなければならないこともある。

 

体調が悪いとき、眠いときに、今まさに起きたようなハツラツさを心に持たなければならないこともあれば、イライラしていたり哀しい気持だったりしたときに、笑顔の曲を弾かなければならないことも当然ある。

 

が。今の姉妹は感情が全部だだもれ。

 

いかにも眠い、というときに眠そうな演奏を、体調が悪い、というときにおなかが痛くなりそうな演奏をします。……いや、演奏で気持ちが伝わるって、逆にすごいですけどね! でも褒めるところではない! こういうことって、聴いている側はわかっても、弾いている本人たちにはわからないこと。だから、少し心を鬼にして説教いたしました。

 

「準備をするときから演奏は始まってるの。つまらなさそうに楽器を準備しているときは、つまらない音楽しか作れないよ。そういう態度のときはもうパパは聴かないことにするね。どんなにやる気が出なくても、どんなに眠くても、笑顔の曲を弾くときは笑顔で入ってきて。演奏者は役者なの。練習で通して弾くときは、心を演技することもいっしょに練習して」

 

長女のヴァイオリン仲間に、憑依型の現四年生がいます。弾く直前まではフニャフニャな態度なのに、演奏に入ると信じられないくらいに見事な空間を作りあげるのです。よくその子の噂を伝え聞くのですが、大人すら夢中になる魅力にあふれているようで、周囲からも一目置かれています。

 

自然にそういうことができる子はいいんです。姉妹はできないタイプなので、演技することを覚えていかないと。感情とは裏腹の曲を演奏するなんて、これからいくらでもあるからね。

  

どんな短い曲にも魂を入れよう
楽しく楽しく演技していこうね

 

ではまた。