弓の毛替えとその効果
平日にも関わらず、家族そろって工房さんに出向き、弓の毛替えをお願いしてきました。というのも、本番1週間前は可能な限りヴァイオリンの環境を変えてはいけない、と教わっているからです。弓の毛を替えたら当然弾き心地も変わるでしょうから、今しかタイミングがありません。
予約もせず突然伺ったため、さすがにちょっと作業まで待ちましたが、それでも快く引き受けて下さいました。子どもたちを公園で遊ばせたり、喫茶店で少しお茶したりと、時間を潰しながら、日々の練習や音楽、レッスンについてなど、とても限定的な会話を夫婦で持ちました。これはこれで有意義な時間だったと思います。
期待と不安。楽器の道は大きく言い表せばこのふたつです。姉妹に比べて天才はゴロゴロいますし、努力の量で上回っている子も山ほどいるでしょう。比べても仕方ないのですが、やはりサラッとできてしまう子が羨ましくないかと言われれば嘘になります。
なかなか思うように音程が定まらないこと、曲の雰囲気をまだなんとなーく弾いていること、少し反抗期にさしかかっていること、学校の忙しさや睡眠時間のこと。話題は子どもたちにまつわる不安ばかり。それでも僅かながら期待や希望が見えるから、無様にもがきながら励まし合いながらやっていこう、と確認する。そんな時間でした。
弓を引き取りにうかがい、職人さんたちにお礼を言い、帰宅。松脂をしつこいくらいに塗りまくり、いざ、弾いてみる。
すると……まったく別のような音が出ました!! こんなに違うのか!! これはもっとはやく気づいてやればよかった。パガニーニのカプリス20番、後半のアップボウスラースピッカートの部分を「もっとしっかり跳ねて」とご指示いただいていたのですが、なかなかできなかった長女。しかし毛替えをしたとたんに出来ています。音も厚みと深みがあって美しい。楽器もしっかり響く。
うわああああ毛替え大事!!! すっごい大事!!!
悩みとか不安とかを一瞬忘れるくらいの変化がありました。先生のひとことが脳裏をよぎります。「楽器のコンディションを整えるのも、演奏家の責任ですよ」
肝に銘じたいと思いました。
良い楽器を使え、という教えはこういうところにも影響するんですね
コンディションチェックはもう少し早めの処置をとれるようになりたいと思いました
ではまた。