人生を劇場にしない

ヴァイオリン経験皆無の親が、迷走しながら長女を導く軌跡

こっそり聴きに行った本選

学生音楽コンクール東京本選から一週間が経ちました。全国大会に進出なさったみなさんは今ごろ自由曲を一生懸命仕上げているのではないかと思います。

 

私が学生音楽コンクールの存在を意識しだしたのは昨年からで、それまではどれだけ権威のあるものかもよくわかっていませんでした。「どんなものだろう」と全国大会をぶらりと聴きに行き、ありえないレベルの高さに驚愕して帰ってきて、「次回は予選・本選も含めてぜんぶ聴きに行こう」と誓ったという経緯があります。

 

さて、そんな今回の東京本選についての感想です。

 

当たり前といえば当たり前ですが、みんな上手かった! ほんの僅差の拙さやほんの少しのミスといったテクニック面での差、身体の大きさや腕の長さなどの身体的な差、緻密さを求める精神力や大胆に切り込む勇気・度胸など心の成長速度の差、いろんな要素が絡み合ってひとりひとりの個性を生み出していて、なかなか興味深かったです。

 

お師匠や先生が「今だけじゃないんです。ずっと続く道なんです」とおっしゃる意味がよくわかる。とてつもない速度で肉体・精神が成長している過程のお子様がたは、その個性を今後どう育てていくかが大事なのであって、今、というこの一点のみを審査するコンクールは、あくまでも「今」が結果になるんですよね。もちろん、その一点にピークをあわせるのも技術力・精神力ですから、この時期に上位を取れるのは大きな才能の持ち主です。

 

審査結果はそのバランスがすぐれている人へのご褒美なのでしょう。プロは技術と精神の良質なバランスが求められるという証左かもしれません。

 

そして同じ曲を20回以上聴くと、楽器の違いや演奏の個性などがわかるようになってくるものですね。それも面白い体験だった。今回初めて課題曲制のコンクールを聴いたので、とても勉強になりました。

 

そんな私の初「東京本選」体験ですが、正直なところ、とても肩が凝りました。21人もの選ばれたお子様たちがそれぞれ長年の修練の成果を披露していくわけですから、演奏者本人たちがピリピリするのは当然ですし仕方ないにせよ、客席にいながら同じ空気を作ってしまったのは申し訳なかった。

 

「客が音楽を聴く」という空間ではなく、あくまでも「音楽道を極めんとする求道者の試練を見届ける」場であると割り切るのが学コンのスタイルなのであれば、まあ仕方ない面もあるのでしょうね。69年も続いた伝統がありますし。

 

とはいえ、ただでさえ緊張しているお子様たちを、もう少し和らげられる客席にしてあげられたら、とも思います。

 

舞台に立った子の一番いい状態を聴きたがっている客席にしたいですね。

 

海外コンクールを体験した方はみなさん一様に「会場の雰囲気がとても温かい」と感想を漏らします
この言葉の意味を考えてみる時期にきているのかもしれません

 

ではまた。