人生を劇場にしない

ヴァイオリン経験皆無の親が、迷走しながら長女を導く軌跡

楽器で食べていくための考察2(現実的な数字)

急激に寒くなってきましたね。札幌では積雪40センチと聞いてとても驚きました。こんなに早くから大雪が降ったと聞くと、昨年2月に起こったアメリカの大寒波を思い出します。ナイアガラの滝すら凍らせたというとんでもない冷気だったそうで。例年の気候はあてにならない時代なのでしょう。

 

そんな寒さの中でも長女は上半身下着で弾くのが大好きです。七分袖より長い袖では「くすぐったい。いやだ」と絶対に弾きたがりません。皆様のお宅ではいかがですか?

 

さて、前回からしばらく経ちましたが、深い考察や経験からのコメントをたくさんいただいたため、本文よりもコメント欄のほうがだいぶ内容が濃いというポストになってしまいました。私の力不足を痛感するとともに、貴重なご意見や体験をシェアしてくださったことにとても感謝しているところです。

 

それでも懲りずに書いていこうと思います。

 

まずはこちらから。

 

福岡で合唱指揮をなさっている今釜さんの記事です。「生活していくのに最低これだけは稼ぎたい、そのためにはこれだけの実働が必要」という具体的な金額が書かれていて、とても興味深かったです。税金や年金・保険、そして自己練習やその他にかかる時間的費用などにも触れられているので、「どれくらい儲かるのかなー。お教室を開けば食べていけるからいいかー」と、今まで漠然と考えていた私の目を覚ましてくれる、とてもいい内容でした。

 

青柳いづみこさんの著書「ボクたちクラシックつながり」の第9章「ピアニストは本当に不良債権か?」に描かれている通り、華やかなイメージと裏腹に、音楽家の経済的現実はかなり厳しい状況です。
演奏だけで年収300万以上の人は演奏家の0.05%、1500人程度とこの本の中では述べられています。

ボクたちクラシックつながり―ピアニストが読む音楽マンガ (文春新書)

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なかなかシビアな数字ですね。演奏だけで年収300万を維持できる人がこんなに少ないとは、と驚かれた人もいるかもしれませんが、これが現実です。

 

ではお教室の先生という立場になるとどうでしょう。

 

レッスンを受けさせる親からすると、少しでも安いお教室を、と探し始めるものですから、当然ながらこの世界にも価格競争は起こります。そして子の数は年々減っていきますから、過当競争は必至。すると、時給換算して3000円くらいまで安くなるお教室もときにはあるでしょう。しかしその金額で本当にレッスンプロは自分の腕を維持しつつ生活を成り立たせることができるのか? という疑問に対する答えをこの記事はつまびらかにしてくれています。

 

それでは、たとえば演奏家は演奏活動でどれくらいのギャランティをもらえるのでしょうか。人によってまちまちなのは当然ですので、ここでは情報の基軸となるであろう、「テレビ出演時の基礎ギャランティ」を確認してみたいと思います。

 

個人演奏家の保護を目的とした「日本音楽家ユニオン」という団体から拝借してきました。NHKと民法それぞれのギャランティの最低ラインを示したものです。キャンセル料まで規定していますので、これを見ると現実味をもったギャランティを想像することができるのではないでしょうか。

 

テレビの撮影は拘束時間に比例して高くなる仕組みなんですね。12時間拘束など本当にありえるのか、と思ってしまいますが、それでも長時間撮影に携わることが出来れば日当約10万円という金額になるわけです。実働時給にして8000円くらいでしょうか。

 

しかし今釜さんの記事にもあったように、準備や維持にかかる時間は無給ですから、割のいい仕事かどうかは微妙なところです。

 

どんな仕事をするにせよ、時は金なり、です。音楽家は仕事を選んでいる余裕はありませんが、生活のためには安売りしていていい業種ではないのも確かです。音楽を生業とするならば、支払われる金額の目安を知っていることは大事。金額交渉するときに有利だからです。最低でもこれだけもらえないのなら、練習しているほうがまし! なんて判断もつけやすいですしね。

 

生きる手段のひとつについて紐解いてみました。

 

「ヴァイオリンの先生になりたい」という長女にとっては現実的な話だと思います
だから調べてみた、というのがそもそものきっかけなんですけどね……

 

ではまた。