人生を劇場にしない

ヴァイオリン経験皆無の親が、迷走しながら長女を導く軌跡

イギリスの音楽教育事情2

先日の続きになります。

 

小学生で楽器を習う子供の割合は、イギリスの方が多いと思います。なぜかというととても手軽に学校で習えるから。学校のクラブのような形で始められるのです。ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、クラリネット、フルート、オーボエ、ギター、ドラムなど。楽器も学校で借りられます。

 

小学校に、外部の先生がやってきて、個人またはグループで毎週教えます。面白いところは、このレッスンは学校の授業中に行われること。一人ずつ、授業を抜けて、学校の音楽室にうけにいくのです。一番人気は、ヴァイオリン。クラスの4分の1から半分くらいの子が習っています。複数の楽器も習えます。

 

それに加えて、(公立では予算がつくと)専門の先生が派遣されてクラス単位でアンサンブルやミニオーケストラの授業がはいります。娘の通っている公立小学校では、補助もあるので、親の負担は30分のレッスンで一回6ポンド(1ポンド170円で、1000円くらい)と格安。低所得家庭の子供ならもっと安くなると思います(たぶん)。

 

先生はいろいろです。ロンドンでは、それなりに質は高い先生が教えてくださいます。学校での職は、安定しているし、人気のあるポストなのです。自分で生徒を探さなくてもいいですしね。私立の良い学校(学費は年間300万ほどします)では有名音大卒の良い先生がそろっています。プロの演奏家もいます。音大並みにいくつも防音の個別レッスン室があったり、きちんとしたホールがあったりします。30分一回個人レッスン20−25ポンドくらい(4000円くらい)ですから結構しますよね。

 

イギリスは低所得者層への保護が厚いのでしょうか。日本人の感覚では「低所得家庭の子供ならもっと安くなると思う」という発想がなかなか生まれません。「貧乏なのは本人の努力不足。そんな家庭に補助してまで楽器を習わせるなんて」といいだしそうですよね。どの世帯にもまんべんなく文化的な教育をというイギリスの教育は、根付いているものが日本とはまったく違うことを感じさせます。

 

そんな中でも格差はあって、とんでもない富裕層には素晴らしい教育が待っているという現実は日本とさほど変わりません。が、ここまで格差があるのかな? 年間300万も学費のかかる学校って、日本だとどこにあたるのだろう……。ほぼ大卒の初任給ですよね、この額。

 

しかしそんなに高額な教育費を支払い、素晴らしい先生に師事したとしても、本気でやる子はほとんどいないという現実。これは楽器演奏が「教養」の一環だからなのでしょう。日本人のほぼすべての人が鍵盤ハーモニカとリコーダーを吹けるのと同じ感覚でヴァイオリンやらピアノやらに触れられるのであれば、クラシック音楽に対する理解度に差が出るのは当然のこと。舞台で弾いているヴァイオリニストがどれだけ高度なことをしているのかを「判別できるだけの体験」を大多数の子が持っているわけですから。

 

ヴァイオリン、人気なんですね。さすがはロンドン。ベーカー街221Bにお住まいだったあの方もヴァイオリンの名手だったそうで。メンデルスゾーン指揮、ヨアヒムソロのベートーヴェン・ヴァイオリン協奏曲を聴いて、運指の違いを研究したという記述がありますね。

 

昔NHKでやっていた彼のドラマが大好きでした
「紳士は常にストレートだ。そして僕は紳士である」……しびれる!

 

ではまた。