人生を劇場にしない

ヴァイオリン経験皆無の親が、迷走しながら長女を導く軌跡

イギリスの音楽教育事情4

本日でこのトピックも最終回です。

 

その中で、本当に音楽が好きでたまらなくて練習を自分でする子、子供を教えるのが(練習させるのが)とても上手い教師についた子供たち、親が熱心な家庭や、良い学校に通っている子供たち、はそれなりに伸びていきます。私立学校でレッスンを受けている家庭は、自宅練習のために個人レッスン(サブの先生ということに)の先生を雇っている人も多数(!)。


ある程度教育(またはお金)がある人たちは、大体それなりのレベルまでクラシックの楽器をやっている気がします。

 

ほとんどが中学生くらいでやめますが、グレード5まではとるというかんじ。それ以降に進むのはけっこうめずらしいです。音楽をやっていると有名公立中学の入学に有利になったり、私立中学の奨学金をもらえたりするのですが、グレード5をトップの成績で通っていることがその候補者になる基準であることが多いからです(多くの場合、音楽だけではなく、学業でもトップクラスであることが求められます)。

 

グレード6以降に進むのが少ないのは、セオリーのグレード5を通らないと、グレード6を受けられないからというのもあります。セオリーグレード5は日本の音高入試レベルだそうです。中学を過ぎると習い事としての音楽を個人レッスンで続けている子はへっていきます。学業ですることがかなり増加してくるので学業に集中することに(この年齢になると状況は日本と少し似てきます)。それでも、学校でオケや室内楽、合唱をたのしみつづけます。

 

どちらにせよ、基本的に楽しいレッスンを受けてきているので、みんな音楽にとても良い印象をもっていて、生涯を通じて良い聴き手になります(ここがイギリスの音楽教育の一番いい点だと思っています)。また、時には弾いたりもします。私の上司は(ボーディングスクールに通っていて、イギリスのかなりよい家庭出身)、ヴァイオリンのグレード5をもっているそう。この間、家族がいなくて一人の時間があったから、久しぶりにヴァイオリンを取り出して、無伴奏バッハを弾いてみたそうで、その曲が、いかに美しい曲かを熱く語ってくれました。

 

でもそこまでいくのは、かなり少数。このような状況なので、真面目に毎日練習をし、本格的な音楽教育を受ける子供となると、さらに割合は、ぐっとへります。その層が日本ではとても厚いのだと思います。

 

「クラシック音楽ファンは日本人全体の1%未満」という日本ヴァイオリンの中澤社長の言葉もあるとおり、日本のクラシック人口は狭く深くなんですね。イギリスのように広く浅くではないことだけは確かです。身近に音楽を感じられているかどうかの文化レベルが違うのですから当然です。こればかりは歴史の差としか言いようがありません。

 

相撲は最近久しぶりに日本人力士が優勝しましたが、三役はモンゴル出身者のオンパレード。モンゴル相撲より稼げる=生活の糧にできるから日本に来るわけですよね。日本人も強い力士を見たいから「日本語がしゃべれて日本の文化に寄り添ってくれるなら」と条件付で受け入れている。

 

ヴァイオリンも同じなのではないかと思うことがあります。日本では食べていくに十分な仕事が無いかもしれない。でもその国の文化に寄り添う覚悟があるなら、不景気とはいえ世界にはまだまだ仕事があり、演奏経験のあるたくさんの聴衆がいる。そんなところでしょうか。

 

けっきょく、どの業界でもどの国でも、人と同じことをしていたら人と同じような仕事しかできないんですよね。それだけは心に刻んでおかないといけないと思いました。

 

大変興味深く、いろいろと考えさせてくれるレポートでした。Hさん、本当にありがとうございました!

 

明日からはまたいつもどおりの日記に戻りたいと思います
こういう記事、今後も増やせるといいなあと思っています

 

ではまた。