人生を劇場にしない

ヴァイオリン経験皆無の親が、迷走しながら長女を導く軌跡

自分で舞台をつくる

先日の続きです。

 

長女、遠方からの朋に出会う。朋となったきっかけは自らのヴァイオリンだったことからその朋に音を聴かせたいと願うのだが……。

 

少年漫画ならこんなヒキでしょうか。

 

ふた家族で楽譜や楽器がたくさん置いてあるお店に出かけ、笛を吹いてみたり太鼓を叩いてみたりとキャッキャしていたのですが、ショウケースに並んだヴァイオリンを見ていた長女は「んー……」と何かを探している様子。そして唐突に「あ、あった、これ、3/4!」と分数ヴァイオリンを探し出して、唐突に店員さんのもとに駆け寄っていきます。

 

「あの、これ弾いてみたいんですけど」

 

……じ、自分で言った! しかも試奏の申し出なんて初めてだろうに!

 

店員さん、小さな客に面食らいながらもとても丁寧に対応くださり、楽器とともに音を出せる部屋に連れて行ってくださいました。そこでバッハやらヴィエニャフスキやらを「こんな感じ~」と弾いてお友達に聴かせたのです。

 

なんというか、平静を保ったように見せかけていましたが、心の中は汗びっしょりでした。怖いもの知らずだなあ長女。お借りしたヴァイオリンは相当鳴るようで、長女も「いいね、これ」と気に入った様子。何曲か弾いて、あまりお店にご迷惑をおかけするのも悪いので早々に退室いたしました。

 

家に帰ったあとに、お店の方にご迷惑をおかけしたにせよ、どうしても自分の演奏を聴かせたいという思いから、とにかく行動に出たことは褒めました。もちろんもっと良い方法があったかもしれませんが、目的に向かって行動するという強い意志を持つことはなかなかできることではありません。その魂だけは忘れてほしくないものです。

 

その一方で、お友達に聴かせた演目についてはディスカッションがありました。長女はまだ練習しはじめたばかりの曲をまっさきに弾いて聴かせた。そのことについては「自分が弾きたいから弾く、ではなくて、たったふたりでもあなたの演奏を前に座ったらお客さんなんだから、どんなものを聴きいたいだろうか、と少しでも考えたほうがいい」「少なくともまだ練習して数週間しか経っていないものを、我が物顔で弾くのは、演奏家のすることではないと思うよ」といった話になりました。長女も深く考えていましたので、今後の刺激にはなったことでしょう。

 

なんにせよ、自分で舞台を作った生まれて初めてのゲリラライブです。作られたところに出て行くだけではなく、こういった特殊な経験が積めたことも、今回とてもいい刺激になったのでした。

 

怖いもの知らずなだけではダメですが、行動に意志がついたのは評価したいところです
あとは行動前に熟慮できるようになるとさらに素晴らしいですね

 

ではまた。