パガニーニの初伴奏あわせ
長女、ヴァイオリンのレッスンがありました。
今回は、初めてパガニーニのコンチェルトに伴奏をつけていただきます。今まで長女の伴奏をしてくださった方々はどなたも本当に素晴らしく、やはりプロは違うなあ、といつも感心してしまうのですが、今回の方もそういった方のなかのお1人。とても迫力のある音をいただけるので、負けていられないよ、長女さん。バァァァッと弾いて!
しかしその長女さん。前日から若干不機嫌で、当日も夕方からのレッスンまでソワソワしたり「お腹が痛い」と言ってみたり、なんだか顔色がよくありません。せっかくの伴奏あわせなのに、体調管理を失敗したのでしょうか。
ひとまず涼しくなってからレッスン室に。ピアノの先生ともご挨拶して演奏開始です。うんうん、悪くないよ。テンポもいいし、音もいい。音程もいつもより何割か増しで良くなってる。と、親の耳にはとてもよく弾けているように思えます。
最後まで弾ききって先生がひとこと。「……あったね」
ずいぶん前から先生は「パガニーニのコンチェルトって、オケでもピアノでも初めてあわせると絶対にあわないんだよね」とおっしゃっていたのです。それもあって、驚きの「……あったね」でした。
でも私も妻も気づいていました。「ピアノの先生が合わせてくださっている」んですよ。途中、テンポ感が0.5秒くらいズレた次の瞬間に直っている、というシーンを少なくとも3回くらいは聴きました。超絶的なテクニックで生徒の不出来をカバーしてくださっていたんですね。
しかもまるで音で長女の演奏を引っ張るように緩急をつけてくださり、そのおかげかいつもよりも表現力が豊かになったように聴こえます。いい伴奏には演奏者も釣られるんですよね。
パガニーニのコンチェルト1番第1楽章のピアノ伴奏って、フルで弾くならまだしも、ヴァイオリンのためにカットしてあると、たぶん弾いている人はそんなに面白いものじゃないと思うんです。単調だし。ヴァイオリンソロのバックで無音でいることが多いし。いかにも「ソリスト用ヴァイオリン曲でござーい!」という様子です。
それなのに、この迫力と牽引力。すごいなあ、伴奏って。
先生も長女に最初から弾きなおさせながら、たくさんのアドバイスをくださいました。ひとまず、「グダグダです、人前ではまだまだお聴かせできません」というところは脱したかな? でもね、ここからがいつも苦しいんですよね。
レッスン後。帰路のさなかに長女がボソっといいました。「あー、緊張した……」そしていつもの顔色のいい長女に戻りました。
……あの不機嫌とかお腹の痛さとかの原因は、緊張だったのか。初めての伴奏あわせでそんなにも緊張するなんて。今までは親子して気づかなかっただけなのでしょうか。それとも心の成長による変化なのでしょうか。
お客を意識し出したというなら大歓迎ですが。
とても楽しい曲に仕上がっていて、親は感慨ひとしおでした
しかしあんなに舞台なれした長女がここまで緊張するとは思いもよりませんでした
ではまた。