人生を劇場にしない

ヴァイオリン経験皆無の親が、迷走しながら長女を導く軌跡

拍手

門下生発表会のパンフレットに、とある一言が書き添えられていました。

 

「演奏者が登場したら、すぐに盛大な拍手を」

 

先生がずっとおっしゃっていたことです。

 

海外のコンクールを初めて映像で見たとき、お客さんがとてもリラックスした姿勢をしていて驚いた覚えがあります。そして、演奏者が登場したとたん、パン、パン、パンと歓迎の拍手がまばらに沸き起こる。演奏者もそれに応えるようにニコニコしながらステージ中央へ。そこでまたひときわ拍手が大きくなります。

 

演奏が終わって素晴らしい出来だと、スタンディングオベーションやブラボーの声がかかり、演奏者が消えても拍手が鳴り止みません。コンクールでは基本アンコールはありませんが、それでも鳴り止まない。普通の演奏でも演奏者が見えなくなるまで拍手は続きます。

 

振り返って日本だと。

 

演奏者登場。水を打ったような静けさ。舞台中央でおじぎ。そこで拍手。

演奏終了。お辞儀にあわせて拍手。退場時には拍手は鳴り止む。

ブラボーなんて声をかける雰囲気では到底ない

 

先生はそれをいつも

 

「日本のお客さんはコンクールに冷たいよね。審査員みたいな目で演奏者を見ている人が多い。なかにはメモを片手に採点している人までいる。音楽を聴く態度というより、テストか何かみたい」

 

と残念そうにおっしゃります。実は私も二女のピアノのコンクールで心からそう思いました。他人の演奏を聴かない人が多い。拍手をしない人も多い。二女がぺこりとお辞儀をしても、家族の拍手以外はほとんどシーンとしていました。

 

前にも書きましたが、演奏者をさらに緊張させてどうするんでしょうね。演奏者の最高のパフォーマンスを引き出すお客が、世界一のお客なのに。第三者の演奏に拍手を惜しまないだけ、ヴァイオリンコンクールのお客さんはまだ温かいほうかもしれない。

 

登場とともに拍手、立ち去るまで拍手。

 

そんな文化が日本にも根付くといいな、と思いました。わが門下では、その一歩を発表会から。なかなかステキな試みだと思います。

 

国際コンクールを受けた方はみなさん「お客さんが優しい」と言います
意識を変えるだけでもだいぶ違うと思うんですけどね

 

ではまた。